生命保険を利用した節税 その(1)
IAU税理士法人の樋口です。
今日は生命保険を活用した
節税方法のひとつとして
保険契約を法人から個人へ名義変更する
プランについてご紹介します。
基本的に、法人契約の生命保険は
個人契約に比べて
以下のようなメリットがあります。
・ 法人で支払う保険料は損金計上することができる
法人で支払う保険料については
保険種類や契約形態・保険期間によって
全額損金あるいは2分の1損金というかたちで
損金計上のルールは詳細に定められており、
これに則った形で支払保険料は
損金計上することができます。
一方、個人で契約した場合には
生命保険料控除(最高12万円)の枠内でしか
所得から控除ができません!
また、法人契約の生命保険を
個人へと名義変更をすると、
個人で新たに保険契約をする場合と比較して
次のようなメリットがあります。
・ 名義変更後、個人が保険料を負担する場合
契約した当時の保険料のまま契約が
継続するために保険料が上がらないですむ。
・ 法人で契約した後、被保険者が罹患し、
新たに保険契約ができない場合などは、
名義変更時は診査を行わないので
個人へ保障を移転することができる。
・ 解約返戻金が低い時に低評価で
法人から個人へ名義変更し、
個人で保険契約を継続すれば
保障を確保することができる。
つまり、終身保険や終身医療保険などを
短期払いで法人契約して、
保険料払込が満了した時点で
個人へ名義変更すれば、
個人は低負担で一生涯の保障を
確保することが可能になるのです。
つぎに説明をするのが
低解約返戻金型定期保険の
法人から個人への名義変更を利用した
節税プランです。
・ 解約返戻金が低い時に
低評価で法人から個人へ名義変更し、
個人で一回保険料を支払うことで
節税をして資産移転ができる。
これは、逓増定期保険などで、一定期間、
解約返戻金が少額に設定されている
タイプの保険を活用した節税です。
まず、解約返戻金が少ない時点で
法人から個人へ名義変更。
↓
その後、個人で保険料を支払い、
解約返戻率がピークに達した時点で解約
という流れで、この方法で個人は
多くの解約返戻金を受取ることができます。
そして、個人受取時の課税関係については、
平成23年の税制改正でルール化され
一時所得課税ということになりました。
具体的な例を挙げると以下のようになります。
<契約内容>
・逓増定期保険 保険金額1億円
・年払保険料5,980,670円
<1年目>累計保険料 5,980,670円
解約返戻金 0円 解約返戻率0%
<2年目>累計保険料 11,961,340円
解約返戻金 478,000円 解約返戻利率4.0%
<3年目>累計保険料 17,842,010円
解約返戻金 3,229,400円 解約返戻率18.1%
<4年目>累計保険料 23,922,680円
解約返戻金 21,267,000円 解約返戻率88.9%
この契約を法人にて契約し、
3年間は保険料を支払います。
そして4年目の保険料を支払う前に
個人へ名義変更を行って
4年目は個人で保険料を負担します。
すると、個人負担は
名義変更時の買取資金である
解約返戻金の3,229,400円と
4年目の年払保険料5,980,670円
との合計なので負担額は9,210,070円。
そして4年目保険料を支払った後に解約すると
21,267,000円の返戻金を受取ることができます。
つまり実質的には
払戻金21,267,000円-負担額9,210,070円ですので
個人の資金が12,056,930円増えたことになるのです(※)。
※この増加分に対しては
一時所得課税が発生します。
ただし特別控除50万円を差引いた後に
1/2を掛けることができますので、
5,778,465円に対して所得税率を掛けた分を
納税することになります。
たとえ役員法酬で最高税率の場合でも
25%くらいの税率になり、
かなりの節税効果があります。
法人サイドからみても
支払保険料のすべてが損金扱い
(買取保険料を除く)になりますので、
こちらもかなりの節税効果が期待できます。
(樋口)
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